
柔軟性が上がると出力は下がる??
柔軟性が上がると筋肉の出力はどうなる??
体が柔らかくなると筋肉の出力が落ちるのではないのかという質問があり、今回はブログのテーマとして私の考えを伝えていきたいと思います。
そもそも柔軟性と筋力は関係があるのかという疑問もあるのではないでしょうか?
柔軟性と筋力の関係
筋肉の動きの違い
筋肉や関節の柔らかさを『柔軟性』、筋肉が収縮(縮む)することで発揮する力が『筋力』です。
柔軟性はストレッチをすることで向上し、筋力は自体重や重りを使ったトレーニングにより向上していきます。また、柔軟性は筋肉が伸びることであり、筋力は筋肉が収縮することです。
柔軟性と筋力は筋肉の働き(使い方)が反対で、勝手に伸ばされるのが柔軟性、自ら縮むのが筋力となります。
ストレッチをすると筋力が下がる
ストレッチにはゆっくり反動をつけずに行う静的ストレッチと軽い反動を使って行う動的ストレッチの2種類があります。運動前に静的なストレッチを30秒行うと、可動域は向上するが筋力は低下します。6秒ほどにすると可動域は変化しませんが筋力は向上します。
よく運動前に静的ストレッチを長くしないほうが良いといいますが、それは一時的に筋力が減少してまうからですね。同じ静的ストレッチでも短時間にすることで、筋力向上もみられることから、柔軟性と筋力の関係ではなくストレッチのやり方と筋力が関係していることがわかります。
私が柔軟性の向上が筋出力を向上させると考える理由
- 主働筋と拮抗筋
- トレーニングや練習により筋の柔軟性は減少する
- ほとんどの場合動きにくい関節が存在する
- 関節の役割
- パフォーマンスのピラミッド
それぞれについて解説していきます。
1.主動筋と拮抗筋
運動を行うときにメインとなり働く筋肉があります。その時、筋肉はギュッと収縮し力を発揮します。一方でその裏側にある筋肉は引き伸ばされながらその動きをサポートしています。このメインとなる筋肉のことを主動筋と呼び、その反対側の動きを行う筋肉を拮抗筋(きっこうきん)と呼びます。拮抗筋は神経の働きにより、抑制され弛緩して主動筋の妨げにならないようにします。
例えば、股関節を曲げて、太ももを持ち上げる際(屈曲動作)、腸腰筋や大腿四頭筋などが働きます。一方でお尻にある殿筋群は弛緩します。しかし、殿筋群の柔軟性が少ないと、股関節の屈曲は制限されてしまいます。殿筋群のストレッチを行い、柔軟性が向上すると、太ももが上がりやすくなるのもこのためです。
拮抗筋の柔軟性の向上は筋力の発揮がしやすくなると考えることができます。
2.トレーニングや練習により筋の柔軟性は減少する
これはスポーツをする方にはわかりやすいと思います。筋肉は練習やトレーニングで疲労するとどうしても硬くなってしまいます。きつい練習やトレーニングの後、筋肉が張って、可動域が減少した経験をした選手も多いと思います。
そのままにしてしまうと、筋肉はどんどん硬くなり、柔軟性は失われていきます。だからこそ、スポーツ選手は普段から、ストレッチ等で体をケアし、可動域を維持しておくことがパフォーマンスの向上につながります。
これは柔軟性の向上と筋出力とは直接関係ありませんが、日々のケアで柔軟性を維持・向上していくことは筋力発揮にも必要であることが言えます。
3.ほとんどの場合動きにくい関節が存在する
人それぞれ得意な動きや、癖があります。どうしてもやりやすい動きに依存してしまうため、動きの少ない筋肉や関節が存在します。すべての筋肉や関節を使いこなしている人はいないでしょう。
そういったことで体は歪んだり、左右差が生まれたりもします。
動きにくい筋肉や関節がパフォーマンスに影響を与えない程度であればよいですが、動きの制限につながる場合は、改善することで力の発揮の制限も少なくなります。制限がなくなることで、効率よく運動することが可能になり、筋出力も向上します。
4.関節の役割
関節には可動性に働く関節と、安定性に働く関節の2種類があります。可動性に働く関節が硬くなると、安定性に働く関節が代わりに補おうとしてしまいます。そして体の安定が弱くなり、力が上手く伝わらなくなります。
股関節は可動性の関節で、体幹のお腹周りは安定に働きます。股関節の可動域が狭いと、体幹が丸まり、足の力が上半身や地面に伝わりにくくなります。
可動性の関節の可動域を向上させること(関節周囲の柔軟性を上げること)は筋力の伝達に大きくかかわり、無駄な力を減らし、効率よく出力を高めていくことにつながります。
5.パフォーマンスのピラミッド
パフォーマンスを高める考え方として「パフォーマンスのピラミッド」というものがあります。
これは、図のような三角形で下から「動作」「パフォーマンス」「スキル」の順になります。
(パフォーマンスのピラミッドの詳細については省略し、他記事で後日更新いたします)

今回、知っていただきたいことは、「動作」についてです。動作には姿勢の安定や可動域が関与しています。そしてこの安定や可動域の能力が高いほど、ピラミッドの土台は安定します。逆に小さく、真ん中のパフォーマンス(筋力・瞬発力・持久力など)や最上段のスキル(技術)が大きいとピラミッドは不安定になります。不安定な状態ではパフォーマンスは安定しませんし、怪我にもつながります。
パフォーマンス部分については成長とともに大きくなります。筋力は子供のころより、大人の方があるはずです。これは体が大きくなるなど様々な要因で筋力は大きくなるからです。
また、スキルも成長とともに洗練されていきます。練習量も上がり、自然と向上していきます。この2つは成長とともに自然と大きくなっていきます。
しかし、柔軟性は逆です。子供のころ柔らかかった体は成長とともに硬くなります。安定性についても可動域が失われたり、歪みや癖などにより、可動性と安定性のバランスも崩れていきます。するとピラミッドの土台は小さくなり、安定感のない形となってしまいます。
だからこそ、柔軟性の向上をさせておくことが大切であり、土台を大きくすることで、筋力の発揮や技術の向上につながります。
結論:柔軟性の向上は筋出力を向上させる
ストレッチと筋出力には関係がありますが、柔軟性が向上することで筋力が向上するという研究データはなく、どちらかといえば現在は柔軟性と筋力は相関がなく、柔軟性が向上しても直接同じ筋肉の筋力が向上することはありません。
しかし、これまでの解説でスポーツパフォーマンスにおいての柔軟性の役割は大きく、動作中の筋出力の向上には役立つといえると思います。
この記事で皆さんのパフォーマンスが少しでも向上すると嬉し